「不気味の谷」の新解釈

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  • 更新日:2016/04/28
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人工知能ブームとロボット

現在人工知能が盛り上がっています。これは、コンピュータの性能進化によりディープラーニングという技法による機械学習が実用的になり、それをもとに様々なことが実現されてきているためです。

例えば、Googleが猫を認識したのにはじまり、最近は囲碁で世界的チャンピオンを負かすところまで来ました。

さて、人工知能と切っても切れないのがロボット。人工知能とロボットの進化により、人間の職業が代替されるのではないかと懸念する人もいます。Oxford大学の研究や、野村総研の研究で試算されています。

ロボットと不気味の谷

ロボットの世界では、ここ数年Pepperをはじめとした人型のロボットが人気です。そこに常に顔を出す問題が「不気味の谷 (Uncanny Valley)」です。

不気味の谷とはロボット工学者の森政弘 東京工業大学名誉教授が提唱した概念で、Wikipediaでは以下のように記述されています。

人間のロボットに対する感情的反応について、ロボットがその外観や動作において、より人間らしく作られるようになるにつれ、より好感的、共感的になってい くが、ある時点で突然強い嫌悪感に変わると予想した。人間の外観や動作と見分けがつかなくなると再びより強い好感に転じ、人間と同じような親近感を覚える ようになる

これを図にすると以下のようになるそうです。

Wpdms_fh_uncanny_valley.jpg© 2004 Matthew Trump.

図にあるように、感情的反応が一気に落ち込むところが不気味の谷です。「人間によく似ているけどなんか違う」という不気味さがある、ということのようです。

不気味の谷の解釈

昨年、私はModbotというシリコンバレーにあるロボットのスタートアップ企業を訪問する機会がありました。そこで共同設立者のDaniel Pizzata氏と話すことができ、不気味の谷について質問したところ、興味深い話が聞けました。

「不気味の谷は興味深い話題です。ここでは私の実体験でのお話をしましょう」

「私はオーストラリアからアメリカに来ました。アメリカに来て間もないころ、人々と話していていると、たまに微妙な反応をされることがありました。」

「私の母語は英語ですが、オーストラリアの英語なのでアメリカの英語とは微妙に違います。少し後になって分かったことですが、私の英語の「微妙な違い」が他の人に微妙な不快感を与えていたようなのです」

彼の話は、2つのことを示しています。

  1. 「不気味の谷」は、対象が人工物でなくても(人間であっても)発生する。
  2. 「不気味の谷」は、見た目の外観や動作だけではなく、音声にも発生する。

そのうえで、Pepperを参照しながら、こう言っていました。

「Pepperのデザインはディズニーのキャラクターを参考にしたと聞いています。ディズニーもPepperも、顔のパーツの配置をデフォルメし、赤ちゃんに近くしているのです。それによって、不気味の谷を巧みに避けているのです」

現在のロボット、特にコンパニオン型のロボットの多くはデフォルメで不気味の谷を避ける方向にあるようですが、アクトロイドのようにあくまで人間の見た目にこだわって研究を進めている人もいます。

Pizzata氏の話からすると、今後のロボット研究では見た目に限らず、声やその他の感覚についても不気味の谷の意識が求められることになりそうです。逆に、人間であれば様々な国籍の人がいるように、ロボットも一般に広がるにつれ、その「不気味さ」が個性として認識されるようになるのかもしれません。

今後どうなっていくのか。たいへん興味深いですね。

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