ahamoは日本の携帯電話回線市場を破壊するのか

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  • 更新日:2021/01/16
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NTTドコモの新しい料金プラン「ahamo (アハモ)」が話題です。

2980円(税別)で月間データ量20GB、ネットのみでの販売以外、特に契約に関する細かい条件がないことで話題になっています。

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これですが、私にはどうも違和感が拭えません。

2980円は安いのか

まず、2980円という価格は安いのでしょうか。

20GBのデータ量と5分以内の無料通話がセットです。

20GBというデータ量は確かに量としては大きいと思います。

私が使っている電話会社はIIJmioです。今となっては特別安いMVNOというわけでもないのですが、ドコモのプランに近いものだと12GBで2,560円(2,160円)です。音声通話がある場合は3,260円(2,160円)となります(音声通話1回線につき+700円)。カッコ内はキャンペーン価格で、2021/2/3までに申し込んだ人が対象です。

ポイントは、このプランは3回線のSIMが付いてくるということです。いまやみなスマートフォン、タブレットなど複数台持ちが当たり前なので、複数のSIMを使えることがメリットの人は結構いるのではないでしょうか。

ちなみに、我が家では3人分のスマートフォンをこのプランで使っています。家には光回線があるので、3回戦でも12GBで不足ということはなく、データ量は余りまくっています。3人分の音声通話をつけても4,660円なので、一人当たりは1,500円程度です。

それと、無料通話をセットにするあたりが、MVNOにはできない底力を感じさせますが、逆に考えればMVNOに無料通話が提供しにくい理由はNTTへの接続料が高止まりしているからに他なりません。

そうなると人々はどう行動するかといえば、FacetimeやLINE通話などのインターネット電話に流れるわけで、「ネット世代の若い人たち」にこの無料通話が(プラン自体のインパクトはさておき)どれだけ実効性があるかは疑問です。

いわゆる電話がより必要なのは年代の高い人たちなので、ネットでしか契約できないahamoは敷居が高いように感じます。

政府はNTTドコモの独占が目標か

もうひとつの違和感は、政府が必要以上に私企業の経営に干渉していることです。

確かに日本の大手キャリアの料金が諸外国に比べて高いのは事実ですが、そのためにサブブランドを充実してきたのではなかったでしょうか。

そのサブブランドとMVNOが戦う図式で一定の競争が確保されてきたところを、NTTドコモ本体が格安プランを出してくる意味は大きいです。

というのも、NTTドコモ自体は回線を保有する企業だからです。MVNOはNTTドコモから回線を借り受けなければ商売ができない弱い立場です(他にも回線を保有する企業はありますが、MVNOへの回線貸しを手広くやっているのはNTTドコモだけなのでここでは置いておきます)。

2980円が本当は高かろうが安かろうが、これまでの価格から考えたインパクトは甚大です。

今回のことで、携帯電話回線契約は、NTTドコモへの回帰が発生するでしょう。ahamoが薄利であることから、契約数を稼ぐことは大きな課題でしょうし。

すると、NTTドコモの市場独占もMVNOへの発言力も強くなります。必然的に体力の弱いMVNOはNTTドコモに吸収されていくことになるでしょう。

最終的にMVNOは潰え、数社の大手キャリアに独占され、再び売り手による価格コントロールが可能となる市場、それがこの先の自然な帰結です。

これが、果たして我々にとって理想的な世界なのでしょうか。

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