食生活(Nov. 4, 2001)
「アメリカ行ったら何喰って生きよう」
来る前は私にとってこれは大問題だった。何せ食い物のまずさで世界を恐怖のズンドコに陥れている...は冗談だが、その名を世界に轟かしまくっている国である。いくら日本人の食生活がアメリカナイズされているとはいえ、毎日マクドナルドってわけには行かない。いったいアメリカに行ったら何を食べるのか。
正直、これは杞憂だった。自炊をする限りにおいて。そしてアメリカナイズされた日本食を食べる限りにおいて。
こちらに来てから、ほぼ毎日自炊をしている。私は料理は嫌いではないが、面倒くさがりなので日本ではあまりやっていなかった。コンビニは山のようにあるし、弁当、レトルト、ファーストフード天国の日本ではついついそっちに流れてしまうのだ。それに、午後9時や10時に会社から帰宅してそれから食事を作る気力は残ってない、というのが実情。要は時間がなかった。ところが、こちらではかなり時間がある。そして外食はあまりしたくない。となるとこれが自炊をせずにいられるだろうか、いやない(反語)。
では何を作るかなのだが、いかにも日本食的なものは材料が手に入りにくい、または値段が張るのでやらない。たとえば、生魚の料理(刺身とか)はかなり絶望的で、特定のお店に行ってそれなりの値段を出さないと手に入らない。魚料理は全般的にお金がかかる。まぁ、日本と比べたら大して変わらないのだろうけど、肉が圧倒的に安いのでそれと比べちゃうと...ねぇ。というわけで肉を使った料理がほとんど。
やはり相対的に値段の安い食材でできる料理を選ぶ傾向にあるのだが、私の好きな食材で圧倒的に安いのがパスタ。どこのスーパーでも大抵売り場1列分を使ってパスタが置いてある。そして値段も安い。パスタ好きにはたまらないと思う。ただ、これは乾麺の話で、生パスタは別(でも日本より安いが)。私がいつも買うのはRigatoniというマカロニの親分みたいなパスタ。2lbs(約900g)入りで$1.50前後。
パスタソースもいろいろ売っているのだが、こんなことがあった。こちらに来てすぐのころ、私はキッチンのついている滞在型のホテル暮らしだった。キッチンがついているとはいえ、あまり手をかける食材を買うわけにもいかなかったので、パスタとパスタソースを買った。これなら食材を余らせることもなく手軽にできる。さてこのパスタソース、正確には忘れたが、瓶入りでホワイトソース系だった。これがなんていうか、白と黄色の中間の色、一見マヨネーズのようなドロリとした怪しい半液体。口に入れると、甘いとも辛いとも酸っぱいとも苦いともつかない、えもいわれぬ不気味な味が口いっぱいに広がって、ちょっとアッチの世界に逝きそうになる。何だこれは?? 勿体無いのでもう一口..ダメだ! この放送禁止もんの物体は人間の喰うもんじゃない! これを口に入れるくらいなら1週間マクドナルドの刑のほうがまだマシ。ていうかこんな危険なもの喰って大丈夫なのかアメリカ人は?
というわけで、痛い目にあって以来パスタソースは買わないで自分で作る習慣になってしまった。とはいってもそんなにいろいろ作れるわけではないのだけど。あとはハンバーグ。ミートソースもそうだが、肉の中でも挽肉が安いため、それを使った料理が多い。そういえば日本では狂牛病で荒れてるらしいけど、こちらではあまり聞かないなぁ。それよりAnthrax(炭疽菌)の方がよっぽど深刻なので...。でも、ココの牛肉大丈夫なのだろうか?
同じハンバーグ系でも、こちらで初めて作ったのがハンバーガー。ハンバーガーパティの場合、牛肉のみを使うこと、つなぎを入れない(入れても卵くらい)ことなどがハンバーグとは異なる。なぜこちらに来てわざわざハンバーガーを作ったかというと、いかにもアメリカっぽいものを作ってみたかったのと、バンズ(ハンバーガーをはさむパン)が普通に売られていること、マックがまずいこと(ってこれは日本もか)などから。あとで気付いたが、ハンバーガーパティはスーパーでもいろんなのが売られている。いかにもだなぁと思ったのはターキーのパティ。チキンじゃないのだ。もっとも日本で見るチキンバーガーは挽肉でもないけど。もちろんもう少しオリエンタルな料理も作る。たとえばカレーライス。さすがにカレーライスの材料は牛肉、たまねぎ、人参、ジャガイモなど普通に手に入るものばかりなのだが、唯一困るのがカレールー。これだけは値段はちょっと張るが日本食材店で買っている。
それから餃子。餃子の材料は肉以外はだいたい日本食材店や中華食材店で買う。餃子の皮もそう。一応スーパーでも売ってるのだが、中華食材店の方が種類も多いし圧倒的に安い。中国人はたくさんいるので、需要も多いのだろう。中国人といえば、中国人のほうが食べ物に関する問題は多いようだ。誰に聞いても食べるものは問題だと言う。日本ほど食生活がアメリカナイズされていないせいだろうか。一方、韓国人の知り合いはそんなに問題ないといっていた。朝食何食べてるの、と聞いたら「シリアル」だそうだ。でも、「キムチがないのが問題だー」といっていた。なんともイメージ通り。
友達の中国人の学生は、やはりほとんどの食事(昼食も!)を自炊で済ませている。自炊の方が安いというお金の問題もあるが、やはりアメリカの食べ物は口に合わないようで、そのことでよく不平を漏らしている。
先日彼が何品か料理を作ってくれて一緒に食べたが、彼のアパートのキッチンは中華系の食材と調味料でいっぱいだった。実際彼の料理はちゃんと(?)中華料理で、日本人の私にもかなりおいしいと感じられる。しかし、確かにアメリカで普通に食べられるものとは隔絶の感があり、彼の不満も無理からぬところだと思った。ちなみに、彼の出身は北京である。ところで、中国では主に男が料理をするのかと彼に聞いたらこんな答えが返ってきた。中国で普段家庭料理をするのは女性の役割で、男性はお客さんが来るとか、何かのお祭りとか、特別な場合のみ料理をするそうだ。そして、トップシェフはやはり男性だということだ。日本のトラデッショナルなお父さんは幸せだね。
それにしても、普段自炊をし続け、よく見るチャネルはfood networkでは、日本に帰る頃には立派なお婿さんになれるかな? て言うかその前に相手? ...(汗)